国税庁発表資料によりますと相続財産に占める土地の割合は近年低下傾向にあるとはいえ、それでも3割超を占めております。税法で定められた土地の評価方法は必ずしもその土地が持つ個別性を十分に反映出来ていないこともあるため、このような場合には不動産鑑定評価による評価額が妥当とされるケースもあります。また、相続人間で遺産分割協議が不調となったり、代償分割が行われることとなった場合には、不動産を金銭換算するために不動産鑑定評価による客観的な評価額が必要とされることがあります。
離婚などで自宅といった不動産が財産分与の対象となる場合があります。不動産は物理的に等分することは出来ませんので不動産鑑定評価によって評価額を算定し、金銭換算をすることとなります。
【 現金や上場株式等 】
金銭的価値がわかりやすく分けやすい
【 土地や建物 】
金銭的価値がはっきりせず単純には分けにくい
法人を設立する形態としては金銭の出資によることが一般的ですが、不動産など金銭以外の資産を出資して法人を設立することが出来ます。これを現物出資と言います。不動産などの現物出資により法人を設立する場合には原則として裁判所が選任した検査役の調査を受けなければなりません。ただし、不動産鑑定士による不動産鑑定評価書を添付して弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けた場合など一定の要件を満たす場合には、この検査役調査を省略することができます(会社法207条9四)。
発起人
出資
現物出資で法人設立
弁護士、公認会計士、税理士等の証明
(不動産については、更に不動産鑑定士の鑑定評価)
不動産会社などを介在せずに個人間で不動産売買を行う場合、当事者双方又はいずれかは必ずしも周辺の相場や売買の対象となる土地や建物の状況について十分な情報を持っているとは限らず、売買後にトラブルとなるケースがあります。このような場合、第三者である不動産鑑定士による客観的な評価額に基づき取引を行うことで、争いを未然に防ぐことが出来ます。また、売買ではなく不動産の交換(所得税法第58条)を行った場合にも時価に差のある不動産同士の交換は贈与税課税などのリスクに繋がるおそれがあるため、あらかじめ不動産鑑定評価により時価を把握していくことがトラブル回避になります。
例えば・・・
買った後に隣人との間で境界の争いがあった
買ってから調べてみると実は相場はもっと安かった
減損会計や賃貸等不動産の時価等の開示といった会計基準に基づき一定時点での時価評価が求められる場合や法人税法の規定により時価での取引が求められる場合などには第三者である不動産鑑定士による不動産鑑定評価が時価を判定する有力な資料となります。
例えば、減損会計
長期間継続して土地若しくは建物を賃貸借している場合、不動産価格の上昇或いは建物の経年劣化といった要因によって当初契約していた賃料(地代や家賃)が実態とかけ離れた金額となっていることがあります。そこで賃料の増減額交渉をする場合の根拠資料として不動産鑑定評価を利用することが出来ます。
建物や附属設備の老朽化
周辺の家賃相場の上昇
ある特定の時点(例えば月初・月末、決算期末、年末、年度末など)において自己(又は自社)が所有している不動産の適正な時価を客観的な視点に基づく不動産の鑑定評価を通じて知っておくことで、売却或いは取得、セールアンドリースバック等を通じた資金繰りや新規設備投資の可否などの経営判断に役立ちます。
自己(又は自社)の所有する不動産を元に資金調達を行う場合には、その不動産の適正な価値を把握しておくことでどれほどの資金調達が可能かどうかの判定に役立ちます。法人の資金調達では事業性評価による融資も徐々に広がっていくことも考えられますが、所有不動産がある場合にはまだまだ担保とされることが多いのが実態です。このような場合は、不動産鑑定評価を行っておくことで金融機関側の視点としては自行の査定した評価額は実勢価格に合っているか、などの判断に役立ちます。